先日、久しぶりに旧佐伯邸を訪れました。
旧佐伯邸は近畿日本鉄道の社長を20年以上務められた近鉄グループの中興の祖、佐伯勇氏の元自邸です。
1965年(昭和40年)竣工 設計は村野藤吾氏。施工は大林組。作庭は小島佐一氏。
大渕池に面した敷地で、対岸から見ると池に浮かぶ島のような敷地です。建物は手入れのされた松林に囲まれていてこちらからはほとんど見えません。お庭には百数十本の松が植えられているそうです。
写真左のベージュ色の建物は松伯美術館。佐伯氏が亡くなられた後、1994年に敷地内に建てられたものです。
それにしてもなんと環境の良い敷地でしょう。この建物が建てられた昭和40年頃は住宅地として開発が進んでいる時期で、界隈では一等地のこの広い敷地を佐伯氏が選ばれたのだと思います。最寄り駅の学園前駅は、当時はまだ乗降人数がそれほど多くなかったようですが、社長宅の最寄り駅として特急の停車駅になったと聞いたことがあります。
敷地に入り松伯美術館の横から進むと広い車寄せに到着します。
以前に建築士団体の見学会で村野藤吾氏が描かれたこの場所のスケッチを見たことがあり、ここに来るとそのスケッチのことを思い出します。
門を入ると屋根付きのアプローチが雁行して続き、門から雨に濡れずに玄関まで到達できます。軒先がかなり低いです。
この日はこちらで開催されたお茶会に参加させて頂きました。建築物としては過去に何度も見学させて頂いておりますが、実際にお茶会として使われている空間に身を置き、時を過ごすことで、今回は建物の良さをより深く感じることが出来ました。
見どころのある名建築でも、使われているからこそ生きた建築になると感じます。
良い経験をさせて頂き大変有難く思います。
松伯美術館のホームページに佐伯邸の茶室「伯泉亭」が紹介されています。
佐伯邸
お庭の小島佐一氏について
小島佐一の世界