建築士会女性委員会の見学会で今井町に行きました。今井町町並保存事務所の方にご案内頂きました。

今井町は16世紀中頃に寺内町として形成された環濠集落で、江戸時代そのままの情緒と風情を残す町です。平成5年に重要伝統的建造物群保存地区(伝健地区)に選定されました。地区内には約500件の伝統的建造物があり日本一になります。また、重要文化財も9つあり(そのうち1つは寺院建築)、全国の伝建地区の中でも一番多いそうです。

つし二階の建物が多く軒を連ねています。つし部分には各家それぞれ意匠の異なる虫籠窓があります。

外壁は白漆喰で木部は塗籠になっており、垂木を含む軒裏の揚げ塗りの左官意匠は、曲線的なものも多くあります。このようなところを施工した左官屋さんが形状に合わせた専用のコテを作ったと聞いたことがあります。
軒下の一階の意匠は太格子、細格子、出格子、戸袋などが連なります。

下屋の熨斗のところは鹿の子漆喰が多く見られます。

屋根は下屋含めて本瓦葺きが多いです。こちらは両側の瓦が部分的に吹き替えられています。垂木の塗籠は波のような形です。

今井町の中には9つの重要文化財建造物があり、竈がそのままの姿で残されており見学出来るところもあります。

敷地は細長い形状で建物の奥に庭があります。

一般的な二列六室の間取り。土間との境には板戸が入っていて施錠出来るようになっています。

写真のように上に閂があるものと、下に閂を設け戸を閉じると自動的に閂が落ちて施錠出来るようになっているところもあるそうです。

竈のある庭(土間)の足元。地覆石が自然石。

壁の上部には換気窓があり、ロープで擦り上げ式に開閉出来る仕組みです。板戸を閉じることも出来ます。

こちらはミセノマの蔀戸。板戸が蔀戸で障子ははめ込みで両側の上下に固定する栓がついています。

名栗の外格子。

とても細い海部丸太が使われているところも何ヶ所かありました。このような格子は他所の地域ではあまり見られません。

煙出しも残っています。屋根の流れに平行なもの(写真右端)が大半ですが、正面が妻になっている左のような櫓組み形式のものは、さらに時代を遡った古いもの(17世紀)とのことです。

町の西の端にある今西家。今井町は自治都市で、この今西家はお白洲のある裁判所の役を担っていたところです。

格子も太く重厚な構えです。馬繋ぎの金物もとても大きく立派なものです。
ちなみに、このような繋ぎ輪金物は牛用と馬用があり、馬用は位置が低いとのことでした。馬は首を下げる方が大人しくなるので低い位置にしてあるとのことでした。知らないことばかりです。

今西家は今井町の象徴的な建物で外観は何度となく見ていましたが、今回初めて内部を見学させて頂きました。ご当主が説明してくださいました。とても広い土間部分がお白洲(裁きの場)だったそうです。周辺の建物に比べると屋根勾配もきつく、室内の頂部の天井高さは9Mを超えています。

二階には、いぶし牢があります。男女別になっており、写真の右の小さな板戸が女性の牢屋の入口です。ハシゴを掛けて入るようになっています。一階で窯で燻してそこから上がる煙で二階に居る罪人牢を自白に追い込んだそうです。ここのお白洲は基本的に軽犯罪の罪人を裁いていたそうです。

東大の伊藤ていじ氏が調査に来られた時に1650年に再建された棟札が発見され、昭和32年に文化財指定されたとのことです。今井町は町全体に保存されていることもあり、今西家重文指定をきっかけとして全国的に町並み保存運動が始まったそうです。

土間の奥には立派な庭があります。

作庭は森蘊氏。遺作とのことです。



今西家は町の西の端に建ち、西(大阪側)から町を守っていました。町の中から見ると商家のような構えですが、表(西側)から見るとまるでお城のような豪壮な外観です。入母屋破風が二重に重なる八つ棟造りです。
今井町は、織田信長の攻めを何度も攻防し最終的には和解したそうですが、その後に自治権を認められ「大和お金は今井に七分」と言われるほど栄え、「海の堺、陸の今井」と称されたそうです。


今井町の地図。赤くマークしてあるところが伝統的建造物、約500件。(地図は橿原市HPより)
伝建地区とはいえ、なかなか凄いと思います。道路の電線地中化(電信柱を撤去)も8割が整備完了されているそうです。
最後になりましたが、今回の見学会では伝建地区である今井町の長屋の改修に携わられた女性委員会メンバーの改修物件も見学させていただきました。
改修の基本は元の姿への復原になりますので、古写真や柱梁など木部の痕跡、周辺の建物等の意匠を頼りに設計を行うわけですが、そちらの建物は表の開口部は周辺状況から腰窓と予想したおられたそうですが、解体後の痕跡を見ると腰窓の敷居の痕跡がなく掃き出し窓だったことが判明し、掃き出し窓に復原改修されたとのことでした。痕跡調査や屋根の仕上げなども今井町の町並み保存整備事務所の方と協議しながら進められたとのことで、実務としてとても参考になる話を現場を見ながら説明してくださいました。
伝建地区として景観を整備するために外観の意匠の規制が多いのですが、修理修景事業として改修(あるいは新築)費用には補助が出ます。

来年は仲の良い建築士が今井町で2軒の改修を予定されているので、話をお聞きしたり見学させていただけるのが楽しみです。実際に自分が業務として携わらないと分からないことも多いのですが、経験談をお聞きできることはとても有難いです。
”今井町で新築・改修等をお考えの方に”
今井地区 町家修景ガイドブック 橿原市HPリンク
