昨年の1月から着工していた築54年の木造住宅の改修工事。建物は昨年末に完成していたのですが、塀などの外構含めて完成しました。
建物を初めて見に行った時は、部分解体半ばで放置された空き家でした。

ファサード面も玄関部が解体されており、少し痛々しい状態でした。
写真のように元々伝統的な意匠の建物ではなかったのですが、お施主さんのご希望もあり周囲の町並みに合わせて伝統的な意匠に改修することになりました。

改修後。屋根はいぶし瓦に葺き替え、外壁は全体に杉板張りで、ファサード面の上部のみ左官壁にしました。正面入り口は観音扉です。

土間は色味のある土で左官で仕上げています。木製の建具類は正面二ヶ所の窓以外は全て古建具を使用しています。ほとんどをお施主さんがご準備されました。一部ネットで購入され、多くは京都の井川建具さんで購入されたとのことです。
敷地内には平屋の2棟(母屋と離れ)の建物があります。入口側の母屋の建物は、居間と食堂兼台所、浴室などの水回り等の空間です。

母屋の着工前の様子。内部も解体が進んだ状態で放置されていました。壁は土壁ではなく乾式の在来軸組工法です。蟻害は見られず、また、地盤も良好なようで大きな歪みもありませんでした。

改修後。来客が多いとのことで、居間は広くとり、天井を吹き抜けにして小屋組の構造を現しにし、開放的な空間にしました。

この雪見障子も古建具ですが、高さを高くする為に建具の下に木を継ぎ足しました。 障子を開けると中庭の向こうに離れ棟が見えます。

台所兼食堂や、洗面浴室トイレ空間は居間と完全に区切っていますが、左側の三枚の舞良戸を開けると台所兼食堂空間とつながります。

仕切りの壁は杉板張りとし、柿渋を塗装しています。

玄関を入ったところに3畳ほどの前室を設けています。こちらも居間側に解放された空間で、階段への上り口スペースになっています。

水回り空間の上部は、新たに梁を設置して小屋裏部屋を作りました。

天井は低いですが、ちょっとした物置き場や、宿泊される来客時には布団を敷くことのできる場所として使える空間になりました。

小屋裏部屋から居間側を見下ろしたところ。居間とある程度一体感が感じられるように手すりは格子にすることになりました。

壁・天井の仕上げは本和紙張りです。
均一でなくムラがあったりスサの凹凸もありますが、和紙は吸収されるような静かな素材で、光が当たった時の陰影も美しいです。

中庭を挟んだ向かい側の離れ棟。こちらはプライベート空間です。ふた部屋の続き間とトイレ、シャワー室を設けています。

こちらも古建具をたくさん使っています。離れで11枚、母屋で15枚の古建具を使いました。それぞれの場所の寸法に近い建具を使っていますが、高さや幅の調整や戸車調整、金物取付など、1枚ずつ建具屋さんに調整を行って頂いています。

離れから見た母屋。お庭の植栽はお住まい後に計画されるとのことです。

中庭周りの塀も、ブロック塀から板張りの塀に改修しました。
離れも母屋も中庭に向けて大きな開口があります。中庭の植栽が整うと、日々、庭の緑を楽しみながら暮らして頂けると思います。
築54年の木造建物ですが、大きな劣化損傷もなかったため、耐震性と断熱性を高めて快適な住まいに生まれ変わったと思います。一時期は空き家だった建物ですが、これから再び長く住み継いで頂ければと思います。