未指定文化財という分類がある事は広く知られていないと思います。
未指定文化財とは、文化財保護法で指定や登録された文化財でなくても、文化的・歴史的価値のある有形のものや地域のお祭りや行事などの無形のものなど、保護をする価値がありながらまだ指定されていないもののことです。これらの未指定文化財を地域で保存・活用したり、登録文化財に登録することが推進されてきています。
昨年より改修工事を行っていた利兵衛の家も現在は未指定文化財と言える建物ですが、登録文化財に申請することになっています。

先日、歴史的建造物と防災(奈良県建築士会主催)の講習会に参加しました。講師は和歌山の中西重裕様で、令和6年能登半島地震の被災建造物復旧支援事業(文化財ドクター派遣事業)の時の内容を中心に話をお聞きしました。
この文化財ドクター派遣事業は、文化財建造物を保護するために国指定の文化財”以外”の文化財(建造物 未指定含む)を対象とし、応急措置及び復旧に向けて専門家を派遣し技術支援を実施する事業です。これまで、東日本震災(2011年)、熊本震災(2016年)、そして能登半島地震(2024年)の3回実施されました。調査の対象は
・県市指定の文化財
・登録文化財
・未指定文化財
になります。国指定の国宝や重要文化財は手厚い支援がありますが、特に未指定の建物は支援が届きにくいため「未指定文化財を中心に復旧支援を行うことが主な目的」とのことです。
未指定文化財を含めた歴史的建造物は、日本建築学会の歴史的建築総目録データベースに登録掲載されていますが、まだまだ未調査地域もあり現在も調査が進められています。データベース登録のためのマップを使った調査の講習にも参加したことがありますが、伝統的な町並みの残る地域に行くと多くの建物が該当します。
この歴史的建築データベースに掲載された建物は、未指定のものも震災時に修復補助が出る対象になります。熊本の場合、登録文化財に登録予定なら登録文化財と同じく修理費の2/3補助、登録しなくても1/2補助。能登半島地震の時は、石川県は70%補助など、自治体単位で補助額や補助対象が決まるため割合は異なります。(能登震災の時は、石川県以外の県では未指定には補助が出なかったとのことです。)
補助を受ける場合でも、復旧の為には所有者の自己資金が必要になります。所有者の負担に耐えうる最小限の工事の検討や、将来の本格復旧に備えて段階的修理を検討するなど、復旧を断念せずに済むよう専門家のアドバイスも必要になり、課題も多いです。専門性のある人材を増やすために、建築団体などでヘリテージマネージャーの資格や文化財ドクター参加資格を得る講習が実施されています。
なお、災害が起こった時は災害地に近い都道府県が被災対応や応急・復旧活動支援を行うことになり、近畿圏では各地の主対応県が決まっているとのことでした。奈良県に関しては、奈良県が被災した場合は和歌山が主対応県で、和歌山県が被災した場合は奈良県が主対応県になるとのことです。建築団体を通して派遣活動をすることになります。