京都で開催された渡辺菊眞さんの学位論文取得記念公開レクチャーを聴講しました。
学位論文のテーマは「地域-地球型建築の設計手法に関する研究」-パッシブシステムの導入とフィールドの読解をとおして-。長年にわたるご研究の成果を簡潔にまとめられたレクチャーでした。
「居る空間」と「祈る空間」に分類をされたそれぞれの空間の拡がる方向性の違い、文化環境として周辺集落に広げた話も解説されました。それぞれが対立するものではなく並列で重なり合う関係でもあるとのことで興味深いお話でした。
実例としては宙地の間、ゲンダイタテアナ(現在建築中)、高知の金峯神社、新潟の水と土の芸術祭でつくられた産泥神社、そしてタイで建築された土嚢+草屋根の学校、天翔ける方舟、研究対象の計画等について紹介され、論考を解説されました。その中で、ご自宅宙地の間の後ろに広がる葡萄棚を生かしたパッシブ建築についても計画を話されました。農業用の建築物(工作物)を見て発想を得られるとはさすが渡辺さんだと思います。

宇宙に意識を向け、すべての根源である「自然を感受することの価値」は、原始的なものでもありながら現代社会では忘れられていることで、我々建築に取り組むものが再認識しなければならないことであるように思います。建築を志す中で、自然との対峙やパッシブについては誰もが考える機会があったと思います。
環境を数値化したり建材の性能が進化するなど、自然環境を科学的に解析しどのような環境でもアクティブで解決する方法は進化を遂げていますが、そのようなことではなく自然環境(根源的なパッシブ)+文化環境を建築論として言語化された解説で、建築についてもっとよく考えなければと痛感しました。

渡辺さんは奈良ご出身ということもあり10数年来のお付き合いです。年に数回お会いする機会がありますが、いつも彼の建築に対する真摯で強い姿勢に感銘を受けるとともに刺激を頂いています。2019年に高知で開催された個展「建てる建築 建てぬ建築 感涙の風景」では学生時代から今までの膨大な作品が展示され、彼の圧倒的な才能が感じられました。毎年、高知工科大学の渡辺研卒業設計展も観に行かせていただいていますが、優秀な力作揃いです。渡辺さんのもとで育つ彼らはとても良い経験をしていることと思います。
すぐこことはるかかなたをつなぐ「地域-地球型建築」
今後の真化(進化と深化)と益々のご発展を楽しみにしています。
来年完成ご予定のゲンダイタテアナの見学会にお伺いできるのがとても楽しみです。