伝統構法で建てられた民家の耐震性を確認するために、限界耐力計算法で検討を行いました。

こちらの建物は天保14年(1843年)に建てられた建物で、築180年になります。
当家の古文所によると代々油屋を営んでおられ、天保14年に火災に遭い同年に再建されたのが現在の主屋とのことです。(明治後期には油屋を廃業されました。)

三列九室型の大型の民家で、構造も立派で襖絵や欄間なども意匠が凝らされています。
玄関土間から東側は元は土間だったそうですが、昭和の頃(50年ほど前)に応接間や個室に改装されました。

広い玄関土間。正面は応接間入口。(調査中)
つし二階。

つし二階は登り梁になっていて、収納場所として広く使うことが出来るようになっています。
構造の検討は井手晃二建築研究所の井手さんにお願いしました。

三列九室部分は壁が少ないのですが、主な柱が通し柱になっており、つし二階の小屋裏部分の壁量が多いため、結果的に耐震性が確保されていることが分りました。
ただし、昭和の頃に改修された土間から東側は基準値を下回る結果となりました。今回の改修ではこの部分を伝統構法による改修方法で耐震性を確保できるようにします。
伝統構法の建物は柔軟さ(粘り強さ)で耐震性を確保しているため、現代の在来軸組法のような建物を固める方法(筋交いや構造用合板で壁量を確保する方法)で改修を行うと、その部分だけが固められることになり、地震時に返って損傷を大きくすることになります。土壁や相応の壁をつくり全体に粘り強い構造にする必要があります。
今回の建物をもし現代の在来軸組工法の構造の考え方で検討すると、多くの壁を入れて建物を固めなければならない結果になることは明らかですが、限界耐力計算法で検討することによりある程度の安全性を確認することが出来ました。
特に瓦屋根(重い屋根)が載った大型の伝統構法の建物は、限界耐力計算法で耐震性を確認することが望ましいと思います。
行政庁により、この計算法による確認の場合でも耐震改修費用の補助が出るところもあり、今回もこの制度も利用しながら改修工事を行うことが出来ればと考えています。