先日、宮津市の成相寺に行きました。
こちらの五重塔は1998年(平成10年)に復元建立されたものです。平成に建てられた五重塔を見るのは初めてです。

建立された当初の鎌倉時代の様式を忠実に再現されたそうです。
設計施工竹中工務店(木工事は滝川寺社建築)。

高さ約33m(108尺) 屋根は銅板瓦葺き
初層の柱、大斗、肘木は欅、二層目から上の柱、大斗は桧、他の化粧材は米ヒバを使用されているそうです。(滝川寺社建築ホームページより)

全国には80数基の五重塔が現存しており、建築時期が一番古い白鳳期の法隆寺の塔から明治維新までに22基、明治期に4基(宗教活動が制約されていたからか44年間に4基のみ)、大正~第二次世界大戦までは0基、昭和期(戦後)に25基、平成以降に30数基が建てられています。
明治期までの26基は全て木造ですが、昭和期(昭和30年代後半以降)の約35年間に建てられた25基のうち約8割の五重塔が鉄筋コンクリート造などの非木造の塔です。その後、平成に入ってから建てられた五重塔は7割程度が木造の伝統構法で建てられているそうです。全体で見ると平成(以降)の塔数が多く、現代は五重塔ラッシュと言われているそうです。
奈良育ちのせいかもしれませんが五重塔には親しみもあり、建築としても興味を持っています。
今まで行ったことのある五重塔のうち、いくつか紹介させて頂きます。
法隆寺

法隆寺の五重塔 (奈良県生駒郡)
680年頃(最古) 高さ31.5m 屋根本瓦葺き 国宝
現存する五重塔のうち逓減率(初重と上重の横幅比)が最小で、上層に行くほど屋根も小さくなっています。初重と五重の柱間は約半分だそうです。安定感のあるプロポーションです。
その他プロポーションを決める要素として、相輪と塔身の高さの比率や、初重の柱間と塔身の高さの比率があります。時代ごとの特徴もあります。
また、初重に裳階(もこし・初重の下に屋根がもう一つついている)が回っています。
裳階のつく五重塔は法隆寺と海住山寺の2基だけだそうです。

醍醐の五重塔 (京都府京都市)
951年(3番目に古い) 高さ37.4m 屋根本瓦葺き 国宝
非常にバランスの良い名塔と言われています。相輪の直径が他の塔に比べると大きいのも特徴的で、多くの五重塔を見る時に見分けがつきやすいです。

五重塔の屋根(軒)を支える斗供は、基本的に三手先で作られています。

興福寺五重塔 (奈良県奈良市)
1426年 50.1m(2番目の高さ、1番は教王護国寺(東寺)の54.8m) 本瓦葺き 国宝
興福寺の五重塔は奈良時代に創建されて以来、五たびの消失・再建が繰り返されて現在の塔は室町時代1426年に再建された6代目の塔です。5回の消失のうち3回は落雷によるものだそうです。
避雷針の設備ができるまでは仏法に祈るしか手段がなく、四方光明電王という梵字を塔内に記したそうです。
軒の反りは緩やかに大きく反っています。

夜のライトアップ。
大きな塔ですので近くで見ると迫力があります。

室生寺五重塔 (奈良県宇陀市)
780~805年頃(法隆寺に次いで2番目) 高さ16.2m(最小) 檜皮葺 国宝

高さが日本一低い五重塔で興福寺五重塔の1/3程度ですが、階段の下から見上げるとそこまで小さいとは感じません。優美なプロポーションで、女人高野にふさわしい美しさと言われているそうです。
この塔は垂木が地円飛角になっているのが特徴です。(地垂木の断面が丸で、飛えん垂木が角材。古い形式)屋根は建立当初は板葺きだったものを明和の修理(1768年)で檜皮葺に変更したそうです。
1998年の台風の倒木で五層全ての屋根が大きな被害を受け、ニュースでも破損した屋根の映像をたびたび目にしていましたが、1999年から2000年にかけて復旧修理が行われ、現在は元の姿を見ることが出来ます。
元々が板葺きだったからか、軒の反りは少なめで垂木もほぼ水平に近いようです。

海住山寺五重塔 (京都府相楽郡)
こちらの五重塔も大好きな塔のひとつです。
1214年(醍醐寺に次いで4番目に古い) 高さ17.7m(室生寺に次いで2番目に小さい)本瓦葺き 国宝
裳階と縁が回っているのが特徴です。軒の反りは少なめです。
いろいろな塔を比べてみると、軒の反り具合も様々です。

裳階を支える柱の肘木が舟肘木でとてもシンプル。

最勝院五重塔 (青森県弘前市)
1666年 高さ31.3m 銅板瓦 重要文化財
東北一の美しさを誇る五重塔と言われているそうです。
軒反りは隅部分で急に反りが大きくなっています。(垂木の反りは僅か。)

初層に欄干付きの縁が回っています。

日光東照宮五重塔 (栃木県日光市)
1818年 31.8m 銅板瓦 重要文化財

軒の反りは少なめです。
この塔は最上層のみ扇垂木なのが特徴です。
一般的には5層とも並行垂木のものが多いのですが、国宝重文22基のうち5基は扇垂木が用いられていて5基のうち4基が最上層だけが扇垂木になっているそうです。理由としては、並行垂木は出隅部が単なる化粧で構造的に機能していないのに対し、扇垂木は全ての垂木が構造として外力に抵抗できるため、台風に風で屋根が飛ばされないように最上層のみ扇垂木にしたのではないかと言われているそうです。

古建築の中でも特に五重塔に興味を持っていたのですが、あるとき海住山寺で「五重塔のはなし」という本をお寺で販売されており購入しました。これがとても面白い。もちろん古の五重塔のことや構造の事などもですが、現在五重塔を建てるとしたら確認申請はどうすればよいか、建築費用はどのくらいかかるかまで、建築としてのあらゆる疑問に答えてくれる本です。ブログの内容についてもこの本からの情報が多くあります。

五重塔のはなし 監修:濱島正士、坂本功 建築資料研究社 2010年発行