以前に主屋を改修設計をさせて頂いた天理の民家で、このたび納屋の改修をされることになり久しぶりにお伺いしました。こちらでは母屋北側の作業の庭のことをカドと呼ばれています。
作業の庭 カド

先日、県内の民家の耐震の検討(限界耐力計算)のための調査に伺ったときに、作業の庭をなんと呼ばれているか尋ねたところ「カド」と呼んでいると仰っていました。
天理の民家と同じくこちらでもカドと呼ばれていることを知り、とても興味深く辞典で調べてみました。
「住の民俗辞典」はかなりの情報量で、インターネットで載っていないことでも調べることが出来ます。

カドについてもしっかり掲載されていました。
「カド」が示すさまざまな場所
①「母屋」の前庭
収穫した穀物を干したり、脱穀・調整などの農作業に使う場。中部・近畿・中国・四国・九州地方などの農家の呼び名であるが、東北地方の秋田県でも使われている。
(一番最初に作業の庭が掲載されていました。狭い範囲での呼び名かと思っていましたが、比較的広範囲で広く使われている呼び名です。)
そのほかとして
②屋敷の前の道 福井県大飯郡や京都市付近の農家での呼び名
③屋敷の出入り口 群馬県利根郡、東京都八丈島の呼び名 ただし八丈島では「イシバシ」とも呼ぶ
④屋外共同作業場 島根県隠岐郡西ノ島付近の民家の呼び名 各家の空地が少ないので共同で設けられた場
⑤便所 福島県会津地方、新潟県北魚沼郡小出町付近の農家での呼び名
⑥共同の水くみ場 青森県、岩手県、秋田県、宮城県の農家 川戸という漢字で表記されることもある
⑦一軒の屋敷 静岡県、愛知県などで一軒の屋敷の呼び名
同じ呼び名でも示す場所は地方によりさまざまです。
「屋敷の入口」は語源のひとつでもある「門」(門松などカドという呼び名が残っている)からも想像できますが、便所のことをカドと呼ぶところがあるとは思いもよりませんでした。
民家の興味深いところは、昔から使われている呼び名が建物や敷地と共に現在も使い続けられているところにもあります。住まい手の話をお聞きしていると、建物と呼び名あわせての歴史が感じられてとても面白いです。
この辞典は調べるためだけでなく読んでいるだけでも相当面白い本で、民家好きの方にお勧めの1冊です。(辞典だけに高価です。)
住の民俗辞典 森隆男編 柊風舎 2019年出版 (比較的新しい本です。)
同シリーズで
「食の民俗辞典」~日本人は、何を、どのように食べてきたのか?~
という本があり、こちらもとても面白そうです。