ふたりと二匹の家こちらの住まいには18畳の空間の和室があります。
お施主さんはお能を習っておられ、練習の出来る和室のご要望を頂きました。
三間ピッチの大空間を木造で作るには、上に二階を乗せるとかなり負荷がかかりますのでこの部屋は平屋建にしています。梁は丸太を使い、丸太の反りも利用して屋根を支えています。
18畳というのは、三間×三間の能舞台と同じ広さですが、敷地の間口の関係も有り半間分は踏み込み床(床の間)としても使える板敷きにして、板の間も含めて仕舞いの出来る範囲としました。


お能の仕舞いの範囲はおおよそ決まっているとのことで、お施主さんに資料を頂き床脇や板の間の場所を検討しました。お施主さんの流派では北を正面にするなどの決まり事もあるそうで、教えて頂きながら計画を進めました。
床の間にもなる板の間と床脇。

畳の敷き方は不祝儀敷きと言う全て平行に敷く敷き方です。一般的な和室ではあまりしない敷き方ですが、大広間の和室の場合はこのような敷き方も多く見られます。
この部屋にはひとつ仕掛けをしています。東側の壁には四枚の襖を入れていますが、真ん中の二枚を開けた中に鏡を張っています。


襖を開けると隣にも和室があるような景色になります。鏡は仕舞いの練習用のものです。


鏡の効果でさらに広く感じます。
お施主さんは長年お茶もされていて、お茶もできるように床脇の前を点前畳として炉を切っています。
板の間の部分は桧の無地板です。現在は白木の状態ですが、年月とともに色が濃くなって落ち着いた色味になることと思います。
地袋の天板は欅の一枚板、床柱は杉の面皮付柱です。落としがけや長押、天井板、竿縁も全て吉野杉です。
通常の材の長さは3mか4mですが、三間の長さに合わせて6mの一本材で製材して頂きました。
竿の断面寸法は部屋の広さや天井の高さに合わせてひと回り大きく設計しています。表情が硬くなり過ぎないように猿頬にしていただきました。

襖の紙は京唐紙の信夫の柄で、灰色の鳥の子参号紙に雲母で摺って頂きました。
腰張りは湊紙を張っています。

最後に湊紙張りが終わり、和室が完成しました。
この和室をつくることが今回の設計の大きなテーマでしたので無事完成してひと安心しました。
ご自宅でゆっくりお能のお稽古をして頂ければ幸いです。