本棚の整理をして山口昌伴さんの本をまた読もうと思って数冊出してきました。
もう25年ほど前の話になりますが、メーカーでキッチンの商品企画の仕事をしていた時に、GKデザイン(道具学研究所)の3日間セミナーに会社から参加させてもらったことが有り、その時に山口昌伴さんのことを知りました。台所考と道具にまつわる文化(世界と日本の各地)の話は大変面白く、メーカーのようなところにいながらも、キッチン(道具のようなもの)をつくるにあたり、その国の文化や習慣を発想の基本に持つべきだという事を思い知った次第です。
建築の仕事を始めてからも、山口さんの本を読んだり雑誌でコラムを拝見したりと、何かとヒントを頂きました。また、大工さんや左官さんなど職人さんの道具と人との関係や、技能を支える道具を作り続けている道具屋さんにも視点を向けたいと思うようになりました。
さて、「和風探索」という本には
座布団 火鉢 炬燵 踏み台 卓袱台 畳 鯉幟 鏡台 針箱 障子 襖 蚊帳 簾 縁台 風呂敷 柳行李 箪笥 あかり 電灯笠 便器 瓦 垣根 箒 注連縄
これらの日本独特の道具やものについてコラムが書かれています。どれもこれも懐かしいと感じるような物ばかりですが、今も日々使われているものもあります。
今の事務所は杉の厚板の床の上に座って仕事をしており、座布団を愛用しています。
座布団については、用途、サイズ、素材、つくり方から、見るべきところまでいろいろあります。事務所で自分の座布団を確認。
あまり注意してみていなかったのですが、隅の”ふさ”はこのようなおさまりでした。真ん中の”とじ”は貫通して十字に入っていて、真ん中で束ねてありました。昔から変わらず懐かしく思いました。子どもの頃はこういう細かいところをよく見ていたように思います。引っ張ったりしながら。

座布団は長方形で前後方向が長手で左右方向が短手。一枚の布を折って綿をクルッとくるんでいるので、三方は縫われていて一方は縫い目がありません。縫い目のないところが前。上の写真の左のほうが前です。
表裏もありますが、柄が同じ場合は縫い目の返しで見るそうです。洋裁と似ていますね。
この座布団の柄は”正倉院”と言うそうで、座布団ではポピュラーな柄だそうです。(知りませんでした。)
縫いは手縫いではなくミシンでした。綿はどんな綿が入っているか開けて見たくなりました。

事務所で床に座って仕事をし始めた時は、キリムのクッションを敷いていましたが、やはり大判の座布団の方が楽で用に合い、それ以来座布団を敷いています。
改めて考えてみると、今までの人生の中で一番座布団が身近な存在になっています。本に書かれている”座布団の用の百態”も実感しております。
さて、これは衝撃的な本の題名。

日本人の住まい方を愛しなさい
2002年に出版された本ですが、いま、ひとつのテーマになっているようなことです。
本の内容とは少し逸れますが、2020年に義務化予定の省エネ基準適合住宅について、いろいろなところで論議がなされています。
義務化については建築のハード面や建築文化的にも問題を含んでいますが(内外真壁の建物に限って地域型住宅として適応除外になるそうですが)、基本的な日本人の住まい方についても深く検討されるべきではないかと感じています。
省エネルギーの気候区分が同じところでも、牧歌的な地域と都市の狭小密集地では、おおよそ住まい方も変わることでしょうし、今回の法制化の基準が家の窓を開けないことを基準にしていること自体が、都市部の理論を日本全国に当てはめているように思えてなりません。

今回の法制化が実施されると、このような風景も、50年後100年後には大きく変わってしまうかもしれません。なぜなら、施工方法の一律化がさらに促進され、左官などの職人の仕事が今以上に減り、街場での技能の継承が途絶えるからです。
住まい方はひとそれぞれ。
昔ながらの日本の家の建て方の工夫と知恵、そして日本ならでは住まい方を活かすことも、省エネにつながると思います。
そもそも義務化にも疑問がありますが、窓も開けて自然エネルギーを利用することを元にした設計手法を基本とし、地域の区分についても省エネ区分ではなく、冬期の日射量と気温で区分するパッシブ地域区分を採用する方が、まだ現実の気候風土に即していると思います。
山口昌伴さんのお話をまた何かの機会にお聞きしたいと思っておりましたが、2013年にご逝去されたとのことで、とても残念です。
これからもご著書から多くを学ばせていただきたく思います。